皆さん、AIエージェント開発って聞いてワクワクしませんか?
「いやいや、興味はあるけど、どこから手をつけるんだよ……」と、頭をかかえていませんか?
かく言う私も、最近「AIエージェント同士が自律的に連携してゴリゴリ仕事を進めてくれる」なんて話を聞き始めて、「え、ウチの家事とかも勝手にやってくれるの? 神すぎない?」と淡い期待を寄せております。まぁ、さすがにAIが家事を100%こなす世界にはまだ時間がありそうですが、実際に企業の現場ではマルチエージェント化がどんどん進んでいるんですって。
そんな中、Googleが今年(2025年4月)のCloud Nextで「Agent Development Kit (ADK)」と「Agent2Agent (A2A) プロトコル」なるものをお披露目しました。なんだか「AIエージェント同士がHTTPで通信しちゃう未来版Web」みたいな香りがプンプンするじゃないですか。
というわけで今回は、この二つがいったい何者なのか、AIエンジニアの皆さんに向けてご紹介したいと思います。「そもそもなんでマルチエージェントが必要なの?」とか「A2Aの標準化で何が変わるの?」など、気になるポイントをサクサク解説します。
1. ADKって何者?:Google製のマルチエージェント開発キット
まずは「
ADK(Agent Development Kit)」から。
これは簡単に言うと、
Pythonベースでマルチエージェント開発をガッツリやるためのフレームワークです。Google曰く、同社が内部で使っているエージェント技術(AgentspaceやCustomer Engagement Suiteなど)を、そのまま外部に大放出したオープンソース基盤とのこと。
これ、何がポイントかというと、
最初から“マルチエージェント前提”で設計されているということ。
具体的には、以下のような特徴があります。
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親子構造のエージェント構築
1つの巨大モデルで全部やっちゃうのではなく、タスクごとに小型のエージェントを作って連携させるのが前提。親エージェントが子エージェントにタスクを投げて協調するイメージです。
たとえるなら、実家の母がいろんな子どもたち(料理担当、掃除担当、買い物担当)に指示する感じ。母1人がすべてをこなすより、子どもたちに専門タスクを投げた方が効率がいいですよね?
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モデルに縛られないアーキテクチャ
LLMはGoogleのGeminiはもちろん、AnthropicやOpenAI、Metaなど幅広く接続可能。
LiteLLMというインターフェースが用意されていて、好きなモデルをぽっと差し替えられます。
「うちの現場はAnthropic派なんですけど…」とか「社内環境的にAzure OpenAIじゃないとダメで…」など、いろんな事情があってもOK。
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さまざまなツール連携がラク
たとえばWeb検索やコード実行など、よく使いそうなツールはプリセット済み。LangChainやLlamaIndexなどサードパーティとも連携しやすい。
しかも
他のエージェントを“道具”として使えるっていう発想が画期的。「あいつが得意ならあいつに丸投げしてしまおう」という、なんとも人間的なノリがプログラムでできちゃうんです。
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マルチモーダル通信が標準サポート
テキストだけでなく、音声や画像をリアルタイムで扱える。
たとえば「お客様の電話対応をしながら、音声データをリアルタイム認識 → 会話を解析 → 必要な資料を自動生成」みたいなフローもわりと簡単にできるらしい。「は? それサイボーグ秘書なん?」ってレベルですが、技術的にはもう普通に実現可能になりつつあるんですね。
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デバッグとテストがめちゃくちゃ便利
ADKにはCLIとWeb UIがあって、エージェントの内部状態をガッツリ追跡しながら開発できる。
「なんでお前そっち行っちゃうんだよ?」とツッコミたくなるような挙動も、UIでステップバイステップ確認して修正すればOK。
これ、AIエンジニアとしては
開発スピード爆上がりが期待できるポイントですよね。
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スケーラブルなデプロイ
コンテナ化して自由にデプロイできるのはもちろん、Google Cloud RunやVertex AIとがっつり連携。
さらには
Agent Engineなるマネージドサービスもリリースされていて、これを使えば「エージェントを走らせるためのインフラ管理は全部Googleにお任せ!」というGoogle的には理想的なベンダーロックの状態に近づきます。
という感じで、「簡単にマルチエージェントが組める」「すぐに運用に乗せやすい」が最大の魅力。
「100行以下のPythonコードでマルチエージェントアプリが完成する」なんて話も聞きますし、AIエンジニアの腕の見せどころになりそうですね。
2. A2Aプロトコル:エージェント同士の通信を標準化するってどういうこと?
次に「
Agent2Agent (A2A)」プロトコルです。
これは端的に言うと、
AIエージェント同士が“共通言語”を使って通信するための新しい標準プロトコル。HTTPやJSON-RPCといったWebの土台を活用しつつ、認証やタスクのやりとりをフォーマット化しています。もうちょっと詳細に見ると…
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Agent Card
各エージェントが「こんな能力あります」と自己紹介カードをJSONで公開する仕組み。たとえば「私は翻訳できます」「私は商品在庫をリアルタイムでチェックできます」みたいに。
これにより、エージェントは「必要な能力を持つ仲間」をA2A経由で探しやすくなるわけです。
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Task Messages
「こんなタスク手伝ってくれません?」と投げる標準メッセージ。パラメータやステータス、成果物(Artifacts)をやり取りしながらお互い連携します。
「生の内部状態を全部垂れ流すのではなく、あくまで“タスク”という単位でコントロールする」のがポイント。
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セキュアな通信とストリーミング
もちろんTLSやOAuth2.0などの認証基盤が組み込まれ、
企業向けのセキュリティ要件を満たせるよう設計。
加えて、Server-Sent Eventsでリアルタイムに進捗を送ったりもできるので、「長いタスクだけど途中経過知りたい」ときもOK。
ここで面白いのが、
現時点で50社以上がA2Aサポートを表明していること。
SalesforceやSAP、ServiceNowなんかも仲間に入っているので、「エージェントがクロス企業で情報をやりとりして業務を進める」っていう
マルチ企業コラボレーションが視野に入っているわけですね。
たとえば、在庫管理を自動化しているエージェントが、他社の物流エージェントに直接「出荷指示」をタスクとして投げる……なんてことが標準プロトコルでスムーズにできるようになりそうです。普通に考えてヤバい未来ですよね?
いや〜、まさしくHTTPがウェブを作ったように、A2Aがエージェントの新時代を切り開く”という話、完全に信ぴょう性が増した気がします。
3. 実際にどんな用途で使われているの?
「夢物語っぽいけど、ホントに使えるの?」という疑問が湧くのも当然。
でもすでに事例がチラホラと出てきています。
3-1. 企業内ワークフロー自動化
採用プロセスやサプライチェーン管理など、複数のシステムが絡む業務フローを、
エージェント同士のタスク連携で自動化。
ひとつのマスター・エージェント(親)が全体を監視しながら、それぞれ「候補者検索エージェント」「面接調整エージェント」「在庫管理エージェント」「物流エージェント」などに指示を出して動かしていく。
結果、「今まで人間がメールとExcelで死ぬほどやっていた作業が半自動化されて、時間めちゃくちゃ浮いた!」という話が現場で出てるそうです。
これ、AIエンジニアにとっては大きなビジネスチャンスですよね。
3-2. カスタマーサポートの効率化
コールセンターの問い合わせ対応エージェントが、在庫データをチェックするエージェントや配送状況を管理するエージェントと裏でやり取り。
電話やチャットしながら裏側ではA2Aでバシバシやり取りが行われていて、お客さんに返答するまでの時間が
従来の4割短縮というレポートもあるとか。
「問い合わせ対応中に勝手に処理が進んでいくなんて、めっちゃ便利かよ?」って思いませんか?
3-3. マルチモーダルAIアシスタント
テキストだけでなく、画像や音声を扱うエージェントを組み合わせて、よりリッチなユーザー体験を提供。
画像認識エージェントと会話エージェントが連携して、リアルタイム映像の内容を解析→ユーザーへ音声合成で案内→別のサブエージェントで予約システムと連動、みたいな流れ。
ここまで来ると「将来的にAIが受付対応から予約管理まで全部やってくれるオフィス」も夢ではないなぁ、と実感させられます。
4. Google Cloudとの相性バツグン+他社クラウドでも使える
「Googleさんの戦略なんでしょ? 結局、GCP使わないとダメなんじゃ…」と思う方もいるかもですが、そんなことはありません。
ADKは
オープンソースですし、コンテナイメージをどこでも動かせるのでAWSでもAzureでもオンプレでも頑張ればいける。
ただし、
Google Cloudとの連携は最強レベルでラクなのも事実。Vertex AIやBigQuery、あるいはAgent Engineを使えば、面倒なスケーリングやログ管理、セキュリティ周りをGoogleに丸投げできるというメリットがあります。
もし「うちはすでにGCPに乗っかってる」という環境なら、それこそ
ADKがベストマッチでしょう。
5. 他フレームワークとの兼ね合い:LangChain, CrewAIなど
「でも、もうLangChainとか使い始めてるんだけど…」というAIエンジニアの方も多いはず。
ご安心ください。
A2Aはフレームワークを超えて相互接続できる設計なので、LangChainのLangGraphエージェントだろうがCrewAIのエージェントだろうが、A2Aに準拠していれば連携可能。
さらにADK内部からLangChainの機能を「ツール」として呼び出すこともできちゃいます。
つまり「ADKしか使えない」「LangChainかADKか、どっちかを捨てろ」みたいな不毛な2択にはならないんですよね。これ、地味にありがたいポイントです。
6. AIエンジニアにとってのメリット
ここまでの話をまとめると、ADK + A2Aを導入する利点はざっくりこんな感じ。
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マルチエージェントアプリを少ないコードで構築可能
しかもGoogleが社内でガッツリ使っている仕組みなので、ノウハウやドキュメントも充実。
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デバッグと運用が段違いにラク
開発者向けツールが初めから揃っていて、Web UIで内部状態をステップ実行できる。
大規模デプロイもGoogle Cloudとの相性が抜群。
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標準プロトコル(A2A)で他エージェントや他クラウドとも連携OK
ユーザーが増えれば増えるほど、エージェント同士で協力し合う“エージェント・エコシステム”が拡張する。
他社製ソリューションとのインテグレーション案件も増えそう。
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企業のセキュリティ要求にも対応しやすい
OAuthやTLS、権限管理、監査ログなど、エンタープライズで必要となる仕組みが用意されているので「使いたいけどセキュリティ怖い……」を打破できる。
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スピーディーにPoC→本番運用まで持っていきやすい
「とりあえず作ってみてうまくいったらクラウドに載せちゃおう」という流れがスムーズ。
MLOpsやDevOpsの流れに乗せることも比較的簡単(CI/CDパイプライン、コンテナ管理など)。
総じて、「AIエージェントを実用レベルで運用したい」という企業のニーズにバシッと応えるプラットフォーム、と言えそうです。
【まとめ】今こそマルチエージェントの波に
今回ご紹介した
Google ADK + A2Aは、まさに“次世代AIエージェント開発のパラダイム”といっても過言ではありません。
AIエンジニアとしては、この流れを見逃す手はないですよね。「一つの巨大LLMに全部任せてめっちゃプロンプト工夫する」って手法ももちろんいいですが、
複数エージェントが協調して高度なワークフローを組み上げるって方向性は、これからますます大きなトレンドになりそうです。
HTTPがウェブを作り上げたように、
A2Aがエージェントのネットワークを作り出し, そこにADKがシームレスな開発体験を与える。
そう考えると、私たちエンジニアは、AIエージェントを「つなぐ」「育てる」時代に突入しているのかもしれません。
最後に、私としては「興味があるならまずADKのリポジトリをクローンしてみる」のがオススメです。ダメなら消してもいいわけですし、触るだけタダ(?)ですからね。
というわけで、マルチエージェント開発の新時代、ぜひみんなで体感してみましょう!