「Google ADK」と「Agent2Agent (A2A)」ってなんですか?

「Google ADK」と「Agent2Agent (A2A)」ってなんですか?

2025年4月11日
TAKUJI OGAWA

皆さん、AIエージェント開発って聞いてワクワクしませんか? 「いやいや、興味はあるけど、どこから手をつけるんだよ……」と、頭をかかえていませんか? かく言う私も、最近「AIエージェント同士が自律的に連携してゴリゴリ仕事を進めてくれる」なんて話を聞き始めて、「え、ウチの家事とかも勝手にやってくれるの? 神すぎない?」と淡い期待を寄せております。まぁ、さすがにAIが家事を100%こなす世界にはまだ時間がありそうですが、実際に企業の現場ではマルチエージェント化がどんどん進んでいるんですって。 そんな中、Googleが今年(2025年4月)のCloud Nextで「Agent Development Kit (ADK)」と「Agent2Agent (A2A) プロトコル」なるものをお披露目しました。なんだか「AIエージェント同士がHTTPで通信しちゃう未来版Web」みたいな香りがプンプンするじゃないですか。 というわけで今回は、この二つがいったい何者なのか、AIエンジニアの皆さんに向けてご紹介したいと思います。「そもそもなんでマルチエージェントが必要なの?」とか「A2Aの標準化で何が変わるの?」など、気になるポイントをサクサク解説します。


1. ADKって何者?:Google製のマルチエージェント開発キット

まずは「ADK(Agent Development Kit)」から。 これは簡単に言うと、Pythonベースでマルチエージェント開発をガッツリやるためのフレームワークです。Google曰く、同社が内部で使っているエージェント技術(AgentspaceやCustomer Engagement Suiteなど)を、そのまま外部に大放出したオープンソース基盤とのこと。 これ、何がポイントかというと、最初から“マルチエージェント前提”で設計されているということ。 具体的には、以下のような特徴があります。 - 親子構造のエージェント構築 1つの巨大モデルで全部やっちゃうのではなく、タスクごとに小型のエージェントを作って連携させるのが前提。親エージェントが子エージェントにタスクを投げて協調するイメージです。 たとえるなら、実家の母がいろんな子どもたち(料理担当、掃除担当、買い物担当)に指示する感じ。母1人がすべてをこなすより、子どもたちに専門タスクを投げた方が効率がいいですよね? - モデルに縛られないアーキテクチャ LLMはGoogleのGeminiはもちろん、AnthropicやOpenAI、Metaなど幅広く接続可能。LiteLLMというインターフェースが用意されていて、好きなモデルをぽっと差し替えられます。 「うちの現場はAnthropic派なんですけど…」とか「社内環境的にAzure OpenAIじゃないとダメで…」など、いろんな事情があってもOK。 - さまざまなツール連携がラク たとえばWeb検索やコード実行など、よく使いそうなツールはプリセット済み。LangChainやLlamaIndexなどサードパーティとも連携しやすい。 しかも他のエージェントを“道具”として使えるっていう発想が画期的。「あいつが得意ならあいつに丸投げしてしまおう」という、なんとも人間的なノリがプログラムでできちゃうんです。 - マルチモーダル通信が標準サポート テキストだけでなく、音声や画像をリアルタイムで扱える。 たとえば「お客様の電話対応をしながら、音声データをリアルタイム認識 → 会話を解析 → 必要な資料を自動生成」みたいなフローもわりと簡単にできるらしい。「は? それサイボーグ秘書なん?」ってレベルですが、技術的にはもう普通に実現可能になりつつあるんですね。 - デバッグとテストがめちゃくちゃ便利 ADKにはCLIとWeb UIがあって、エージェントの内部状態をガッツリ追跡しながら開発できる。 「なんでお前そっち行っちゃうんだよ?」とツッコミたくなるような挙動も、UIでステップバイステップ確認して修正すればOK。 これ、AIエンジニアとしては開発スピード爆上がりが期待できるポイントですよね。 - スケーラブルなデプロイ コンテナ化して自由にデプロイできるのはもちろん、Google Cloud RunやVertex AIとがっつり連携。 さらにはAgent Engineなるマネージドサービスもリリースされていて、これを使えば「エージェントを走らせるためのインフラ管理は全部Googleにお任せ!」というGoogle的には理想的なベンダーロックの状態に近づきます。 という感じで、「簡単にマルチエージェントが組める」「すぐに運用に乗せやすい」が最大の魅力。 「100行以下のPythonコードでマルチエージェントアプリが完成する」なんて話も聞きますし、AIエンジニアの腕の見せどころになりそうですね。

2. A2Aプロトコル:エージェント同士の通信を標準化するってどういうこと?

次に「Agent2Agent (A2A)」プロトコルです。 これは端的に言うと、AIエージェント同士が“共通言語”を使って通信するための新しい標準プロトコル。HTTPやJSON-RPCといったWebの土台を活用しつつ、認証やタスクのやりとりをフォーマット化しています。もうちょっと詳細に見ると… - Agent Card 各エージェントが「こんな能力あります」と自己紹介カードをJSONで公開する仕組み。たとえば「私は翻訳できます」「私は商品在庫をリアルタイムでチェックできます」みたいに。 これにより、エージェントは「必要な能力を持つ仲間」をA2A経由で探しやすくなるわけです。 - Task Messages 「こんなタスク手伝ってくれません?」と投げる標準メッセージ。パラメータやステータス、成果物(Artifacts)をやり取りしながらお互い連携します。 「生の内部状態を全部垂れ流すのではなく、あくまで“タスク”という単位でコントロールする」のがポイント。 - セキュアな通信とストリーミング もちろんTLSやOAuth2.0などの認証基盤が組み込まれ、企業向けのセキュリティ要件を満たせるよう設計。 加えて、Server-Sent Eventsでリアルタイムに進捗を送ったりもできるので、「長いタスクだけど途中経過知りたい」ときもOK。 ここで面白いのが、現時点で50社以上がA2Aサポートを表明していること。 SalesforceやSAP、ServiceNowなんかも仲間に入っているので、「エージェントがクロス企業で情報をやりとりして業務を進める」っていうマルチ企業コラボレーションが視野に入っているわけですね。 たとえば、在庫管理を自動化しているエージェントが、他社の物流エージェントに直接「出荷指示」をタスクとして投げる……なんてことが標準プロトコルでスムーズにできるようになりそうです。普通に考えてヤバい未来ですよね? いや〜、まさしくHTTPがウェブを作ったように、A2Aがエージェントの新時代を切り開く”という話、完全に信ぴょう性が増した気がします。

3. 実際にどんな用途で使われているの?

「夢物語っぽいけど、ホントに使えるの?」という疑問が湧くのも当然。 でもすでに事例がチラホラと出てきています。

3-1. 企業内ワークフロー自動化

採用プロセスやサプライチェーン管理など、複数のシステムが絡む業務フローを、エージェント同士のタスク連携で自動化。 ひとつのマスター・エージェント(親)が全体を監視しながら、それぞれ「候補者検索エージェント」「面接調整エージェント」「在庫管理エージェント」「物流エージェント」などに指示を出して動かしていく。 結果、「今まで人間がメールとExcelで死ぬほどやっていた作業が半自動化されて、時間めちゃくちゃ浮いた!」という話が現場で出てるそうです。 これ、AIエンジニアにとっては大きなビジネスチャンスですよね。

3-2. カスタマーサポートの効率化

コールセンターの問い合わせ対応エージェントが、在庫データをチェックするエージェントや配送状況を管理するエージェントと裏でやり取り。 電話やチャットしながら裏側ではA2Aでバシバシやり取りが行われていて、お客さんに返答するまでの時間が従来の4割短縮というレポートもあるとか。 「問い合わせ対応中に勝手に処理が進んでいくなんて、めっちゃ便利かよ?」って思いませんか?

3-3. マルチモーダルAIアシスタント

テキストだけでなく、画像や音声を扱うエージェントを組み合わせて、よりリッチなユーザー体験を提供。 画像認識エージェントと会話エージェントが連携して、リアルタイム映像の内容を解析→ユーザーへ音声合成で案内→別のサブエージェントで予約システムと連動、みたいな流れ。 ここまで来ると「将来的にAIが受付対応から予約管理まで全部やってくれるオフィス」も夢ではないなぁ、と実感させられます。

4. Google Cloudとの相性バツグン+他社クラウドでも使える

「Googleさんの戦略なんでしょ? 結局、GCP使わないとダメなんじゃ…」と思う方もいるかもですが、そんなことはありません。 ADKはオープンソースですし、コンテナイメージをどこでも動かせるのでAWSでもAzureでもオンプレでも頑張ればいける。 ただし、Google Cloudとの連携は最強レベルでラクなのも事実。Vertex AIやBigQuery、あるいはAgent Engineを使えば、面倒なスケーリングやログ管理、セキュリティ周りをGoogleに丸投げできるというメリットがあります。 もし「うちはすでにGCPに乗っかってる」という環境なら、それこそADKがベストマッチでしょう。

5. 他フレームワークとの兼ね合い:LangChain, CrewAIなど

「でも、もうLangChainとか使い始めてるんだけど…」というAIエンジニアの方も多いはず。 ご安心ください。A2Aはフレームワークを超えて相互接続できる設計なので、LangChainのLangGraphエージェントだろうがCrewAIのエージェントだろうが、A2Aに準拠していれば連携可能。 さらにADK内部からLangChainの機能を「ツール」として呼び出すこともできちゃいます。 つまり「ADKしか使えない」「LangChainかADKか、どっちかを捨てろ」みたいな不毛な2択にはならないんですよね。これ、地味にありがたいポイントです。

6. AIエンジニアにとってのメリット

ここまでの話をまとめると、ADK + A2Aを導入する利点はざっくりこんな感じ。 - マルチエージェントアプリを少ないコードで構築可能 しかもGoogleが社内でガッツリ使っている仕組みなので、ノウハウやドキュメントも充実。 - デバッグと運用が段違いにラク 開発者向けツールが初めから揃っていて、Web UIで内部状態をステップ実行できる。 大規模デプロイもGoogle Cloudとの相性が抜群。 - 標準プロトコル(A2A)で他エージェントや他クラウドとも連携OK ユーザーが増えれば増えるほど、エージェント同士で協力し合う“エージェント・エコシステム”が拡張する。 他社製ソリューションとのインテグレーション案件も増えそう。 - 企業のセキュリティ要求にも対応しやすい OAuthやTLS、権限管理、監査ログなど、エンタープライズで必要となる仕組みが用意されているので「使いたいけどセキュリティ怖い……」を打破できる。 - スピーディーにPoC→本番運用まで持っていきやすい 「とりあえず作ってみてうまくいったらクラウドに載せちゃおう」という流れがスムーズ。 MLOpsやDevOpsの流れに乗せることも比較的簡単(CI/CDパイプライン、コンテナ管理など)。 総じて、「AIエージェントを実用レベルで運用したい」という企業のニーズにバシッと応えるプラットフォーム、と言えそうです。

【まとめ】今こそマルチエージェントの波に

今回ご紹介したGoogle ADK + A2Aは、まさに“次世代AIエージェント開発のパラダイム”といっても過言ではありません。 AIエンジニアとしては、この流れを見逃す手はないですよね。「一つの巨大LLMに全部任せてめっちゃプロンプト工夫する」って手法ももちろんいいですが、複数エージェントが協調して高度なワークフローを組み上げるって方向性は、これからますます大きなトレンドになりそうです。 HTTPがウェブを作り上げたように、A2Aがエージェントのネットワークを作り出し, そこにADKがシームレスな開発体験を与える。 そう考えると、私たちエンジニアは、AIエージェントを「つなぐ」「育てる」時代に突入しているのかもしれません。 最後に、私としては「興味があるならまずADKのリポジトリをクローンしてみる」のがオススメです。ダメなら消してもいいわけですし、触るだけタダ(?)ですからね。 というわけで、マルチエージェント開発の新時代、ぜひみんなで体感してみましょう!